まだ年始の休みの時期だったでしょうか。「1/7~1/9あたりでどこか滑りにイケる人おらんか?」という呼びかけに勢いだけで参加表明し、さらに1白2日で2箇所滑るぞとなったので、広範囲にスキー場を持つ志賀高原で滑ることが決まりました。雪山の選定、宿の確保、移動手段の確保、実に2日ほどで確定した日程のスピード感には惚れ惚れしますね。突発的な旅はこういうところもワクワクするので個人的には好きです。
まぁ宿の確保を自分がしたんですけど、予約してからプランを変更した方が良いとなって、予約サイトと宿の双方への連絡が必要になってちょっと手間取ってしまったのは失敗でした。差額がちゃんと返ってきたのでまぁ勉強になりましたということで。予約サイトから予約して、キャンセル料が発生するタイミングだけどキャンセル料が発生しないことをホテル側と握っている場合は、ホテル側から「キャンセル料免除」での予約取り消すフローがある、というのを知っておきましょう。ホテル側から「まず予約をそちらでキャンセルしてもらって」と言われても、キャンセル料が発生する場合はキャンセルを自分でしてはならない。なかなか大変ね。
とまぁ準備期間での一悶着はありつつも無事に当日を迎えます。まだ月が沈む前、4時台に家をでて始発の電車で友人との合流地点、湯田中駅に向かいます。電車での移動時間は実に4時間。車で行く友人たちも3, 4時間運転したらしい。思ってた以上に遠かった。でも移動中に小説がたくさん読めるので、電車旅は好きです。
友人と合流して熊の湯スキー場に隣接する宿「熊の湯ホテル」に向かいます。晴天に恵まれ、場所の割に道路に広がる雪は少なめ。交通状況も悪くなく、スムーズに目的地につきました。
チェックインと着替えを手早く済ませ、新調したボードを担いでゲレンデへ。青空の広がる熊の湯スキー場。レストラン入り口には、大きな熊を模したオブジェが鎮座しています。朝から晴れている割に、雪はサラサラの状態で、シャバシャバしたような水気を感じさせるものではありません。これがこのあたりの雪質特有のものなのかもしれません。
リフト券も確保し、いざ今年最初の滑走へ。新しいボードの感触の確認というのもあるので、この日は全体を通して結構慎重に滑っていたと思います。あと久々の運動ということもあり、すぐに疲れてしまうだろうなという予想と、筋などを傷めないかという心配が常にありました。スノーボードは普段使わない筋肉を使うので、ある程度体を動かしていたとしても不安はついてきますね。それでも滑ってしまえば、吹き抜ける風が一緒にさらってくれているのか、抱いていた不安は小さくなっていくものです。久々の感覚。めっさ気持ちがいい。適度に積もったサラサラした雪は、ボードで削られるでもなく、フカフカしすぎるでもなく、予想したとおりにボードをつかんでくれる感じがして、滑りやすいという印象を持ちました。
序盤の滑走の感触が比較的良かったこともあり、友人たちとコースの一番高いところに意気揚々と向かいます。標高が高いスキー場ということもあり、リフトからの眺め、滑っている最中の景色も素晴らしいものでした。
コースは横に広いものが多いのですが、傾斜がかかった場所が多く、傾斜を考慮したボードさばきをしないと、必要以上にブレーキが掛かったり速度が出たりと、制御が難しくなるようなポイントがあったように思います。圧接されたところとそうでないところが隣接していて、境目が分かりづらいというのも自分にとっては難しいところでしたね。転倒せずに滑るということがあまりできませんでした。それでも、人が少なかったことで大きくターンしながら滑るということができたのは楽しかったですね。遠くに広がる景色を眺めながら、自分のペースで滑ることができました。友人はみな颯爽と滑っていったので、いつも待たせてしまっていたのが申し訳ないと思うところです。
お昼はゲレンデ食として定番のカレー。器が横に長い特徴的なもので驚きました。ご飯とカレーの接地面が少ない。ルーの方に全体的にご飯を移すという食べ方になりましたね。
そして午後の滑走なのですが、各コースの連絡路となる林道部分はどのゲレンデであれ狭くなりやすいものと思います。熊の湯スキー場もそうで、隣り合うコースを繋ぐ道は狭くなっていました。友人についていく形で連絡路を進んでいると、予想外にボードのエッジがかかってしまい急旋回、連絡路横の斜面を少し登った後、連絡路を横切るように滑ってしまいます。ブレーキをかけるも止まりきれず、コース外にボードが飛び出す。急にふわっと、ボードがなににも接していないことを足から感じ取りました。驚くまもなくガサガサと草木をなぎ倒す音がしたかと思ったら、ドンっと鈍い音とともに景色が静止。傾斜に生える草木に引っかかる形で滑落は止まりました。ちょうど録画をしながら滑っていたので、滑落する瞬間も録画できました。
体の右側に木があり、脇腹の上あたりを支えており、足とボードを長く生えた枝葉が絡みつくような形で支えられてました。両足を振り上げたような形で、背を丸めたエビの状態。地面から一番近いのは首辺り。すぐに脱出が難しいと判断し、まずは友人に電話で連絡。yukiyama というアプリでそれぞれの位置はわかるので、落ちたポイントを伝えて、近くまで来てもらうようにお願いした。yukiyamaアプリのありがたさを実感したものです。友人が来てくれるまで、コースへの復帰を試みます。
ボードを枝が支えてくれていたので、上体をさらに折ってブーツとボードを分離させます。もっと柔軟しておけばよかったとか考えていましたね。体が動くという状態に安心していたんだと思います。両足を地面につけようとすると、足がすっぽり雪にハマる。これ、もしかして動けなくなるのでは?と別の不安が頭をよぎりました。ここで悩んだのは、上のコースに向かうか、下に降りきってしまうかということ。コースが見えているのは上の方ですが、傾斜に逆らわないほうが動けるかと思い、下に1歩踏み出しました。ズズズ…. 足元の雪が崩れるのと同時に、想像以上に下に滑ったことに驚き木をつかんで急停止。あまりに危うい。雪で地面が近いようにみえるんですが、おそらくここは雪がなければ急斜面、あるいは崖なんですよね。自分が転げ落ちるイメージが恐怖心を誘い、上に登ることを決めました。この瞬間が、滑落したときよりも怖かったかもしれません。幸い、コースから外れてすぐの木に引っかかったので、距離としては短いものです。ですが、いざ登ろうと思って足を踏み出すと、上に踏み込んだ足、もう片方の支えている足、ともにズズズっと下にずり落ち、下手に動くとさらに下に行ってしまうという状態。やばいやばいと焦りながら、必死に登り方を考えます。まず最初に試したのは、、ボードを雪に刺し、ある程度固定できたところで、それを支えに体を持ち上げるというもの。少しは手応えもあったのですが、少しでもボードを支える雪が不安定になると、突然支えがなくなるような感覚になりさらなる恐怖を植え付けられました。急に落下するアトラクションのような感覚です。体を大きく動かすと、変化に耐えきれなくなった雪が崩れるので、一歩ずつ、かなり小さい歩幅での移動しかできないことを悟りました。少しでも足元の雪が崩れないように、胸あたりにある雪を手で崩し、足場になる辺りにまとめて固めます。そこに片足を斜面に突き刺すように少し上にあげます。グッグッとつま先に力を入れて雪を固め、更に足元を安定させ、いを決して体重を預ける。少し下にずれますが、上げた足よりも下には落ちません。3歩進んで2歩下がる、これを一歩の中で生み出しているイメージ。おそらく数センチしか登れてはいないですが、手応えを感じられたことに活力を感じました。これならコースに戻れる。時間をかけてようやくコースの端に手がかかるかというところまで来ました。
長い時間悪戦苦闘する間、通りかかった人はおそらく2人。人が少ないことが逆にこのときは心細かったですね。そして友人も合流し、気持ち的にも余裕ができました。下手に救助しようとすると友人を巻き込みそうだったので、独力で登り切るのを見守ってもらいます。そして滑落から40分程でしょうか、コースに復帰できました。戻ってきたという安心感と同時に、とんでもない疲労感が身体を襲います。雪道を登るというのがいかに過酷か、期せずして体感してしまいました。この後の滑走は、疲労と崖への恐怖心でガタガタでしたね。
点灯を繰り返して疲労困憊になったことや、GoProが寒さによって録画できなくなったりするなど、気持ち的にも少し下火になってきていたので、自分だけ早めに切り上げさせてもらい、着替えてルームキーを受け取り、宿泊する部屋に入りました。和洋折衷といった内装で、人数に対して非常に広い部屋。そして浴場のお風呂は、そこまで広いものではなく、洗い場が4箇所、内湯と露天風呂の2箇所入るところがあり、内湯は43度と熱く、露天風呂は雪のせいか比較的ぬるかったですね。洗い場が露天風呂に繋がる扉のすぐ横にあり、誰かが出入りするたびに冷気が入り込むため非常に寒いというのが印象的。とにかく早く洗って湯に浸かりたいという気持ちで溢れてました。
温泉の後少しのんびりしてから夕飯へ。テーブルに並べられた品目をみると、値段の割に非常に豪盛なもので、友人とともに驚いていました。近くの他の宿に止まったことがあるけどこんなに豪盛ではなかったと友人が話してましたね。一つ一つがとても美味でご飯も進み、3杯平らげてました。
一通り終えて体の調子を確認してみると、滑落事に木と接触した右胸下辺りに少し打ち身のような感覚が残っていました。表面的にわかるような内出血をしているものではないので、具体的な怪我の箇所はわからないのですが、悪くても骨にヒビが入っているといった程度でしょうかね。大きく呼吸をしたり、身体全体が連動して動くような動きをすると少し痛みがある程度。寝て起きてからまた確認しましょうかね。
今シーズン最初の雪山、熊の湯スキー場は、コンディション良し、初滑落あり、大怪我はないが軽傷あり、といった感じになりました。滑落というかなり予想外なことはありましたが、新しいボードの感触を掴みつつ、これまでの滑り方を思い出すにはいいコンディションの中で滑れたかなと思っています。林道への恐怖心というのが植え付けられてしまいましたが、それを差し引いても楽しい雪山でしたね。今年すでにいくつか予定をいれているので、まずは動ける範囲の状態で帰ってくるというのを達成したいですね。