全身が重い。さすがにここまでの2日間の疲労は、いくらトリフィート小樽運河やグリッズプレミアムホテル小樽の環境が良いといっても、自身の回復速度で抑え込めるようなものではなかった。しかし目覚めはいいのだ。ベッドに入ってから気絶するように寝て、おそらくそのまま、レム・ノンレム睡眠というサイクルを無視して、ひたすら深い眠りを続けたのだろうというような感覚。6時頃には起きて行動を開始してたと思う。この日の朝食はスタンプラリーとは関係のない場所、「鱗友朝市」に向かいます。早々にチェックアウトをし、グリッズプレミアムホテル小樽を出ると、ハートに固められた雪が並んでた。こんなにきれいに固められるんやなと感心しカメラを構えてた。
「鱗友朝市」はなんと朝の4時から空いているという驚きの営業時間。グリッズプレミアムホテル小樽から少し距離はありますが、「鱗友朝市」のある方角には、この日の目的地、貴賓館やおたる水族館があるので、バス数駅分の雪道をのっしのっしと歩きます。まだ誰の足跡もない、夜中に降った雪を踏みしめながら、日が上がりきっていない寒空の中を20分ほど歩いて、「鱗友朝市」に到着。大きな商いの声があがっているということはなかったですが、お店の前を通るときは、お勧めの魚介を買わないかと、居酒屋のキャッチのような声のかけられ方をしたのも印象的でした。
「鱗友朝市」の中には定食屋が2店舗あり、その1店舗「いち乃家」に入りました。カウンター席のみで、決して広いお店ではないですが、他にお客さんは1人だけだったので、狭さを感じることはなかったです。入って座ってメニューを眺め、何を食べようかとけっこう悩みましたね。海鮮系の丼は昨日食べているが、また食べるのも悪くない、ザンギの定食も美味しそうなんだけどここまで来て海鮮を食べないのもなんか違う。悩んだ末に選んだのは色んな種類の品目が食べれそうな「三点セット」を選びました。ヒレカツ、刺し身、天ぷら、こんなわがままな選択肢があるなんて。めちゃくちゃ美味しかったです。やはり刺し身の食べごたえがあるのがいいですね。一切れの厚みが大きく、歯ごたえを感じるほど身がしっかりとしています。そしてお味噌汁の出汁がいい。海鮮の出汁最高です。
朝食を済ませ再度雪道を少し進み、バス停で祝津方面に向かうバスを待ちます。風で舞い上がる屋根の雪なんかを見ながら、晴れ間の寒空に震えつつ、やってきたバスに乗り込む。この日もバスを何度も乗ることが予想されたので、1日券を購入しておきます。
開場前のおたる水族館に到着。水族館の飼育員さんと思われる人たちの流れにしばらく身を委ね、水族館前で一人別の道に。そこそこ傾斜のある、雪で覆われた道を疲労の残る足をなんとか持ち上げて登っていき、流刑地と名高い場所が拝める、祝津パノラマ展望台に到着です。展望台の足場は一面真っ白なんですが、新雪と踏み固められた雪がまだらな状態で広がっており、足が埋まったかと思ったら、次の一歩はまるで氷の上に足を載せたように滑りやすかったり、非常に歩きにくい。軽く膝をついてしまうくらいにはバランスを崩したりしました。
祝津パノラマ展望台からの眺めも良いのですが、主目的はトド岩。六花ちゃんのヨーグルトを食べてしまったり、名前の読み方や漢字を間違えた罪深い人たちが送られてくる場所ですね。遠くから眺めて見える範囲では、トドは見られませんでした。季節的にこの辺りにこないのかもしれません。
おたる水族館の開場まではまだ時間があるので、先に入れるようになる別のスタンプのポイントに向かいます。雪に埋まった祝津3丁目のバス停から歩いて10分ほどの場所にある、国登録有形文化財の「鰊御殿小樽貴賓館旧青山別邸」が目的地です。
おたる水族館の近くにある鰊御殿を1回目のスタンプラリーのときに見学しており、その大きさや、ニシン漁で使われた道具など歴史的な資料の数々に驚いたんですが、旧青山別邸の鰊御殿は、それを遥かに凌ぐ広大さでした。レストランがあると事前の調査で知ってはいたんですが、門をくぐってから目的の建物にたどり着くまでの道のりで、漫画に出てくるような豪邸の外観そのものというのを見せつけられましたね。花梨先輩がここに住んでるといった設定になっているんですが「本物のお嬢様やん」と思わずにはいられませんでした。歴史ある建造物なので、もうすこし風化した情景をイメージしてましたが、厚い雪をかぶりつつも威厳を放つその佇まいは、逆に力強さを感じさせます。
貴賓館の中にあるレストランでは、スタンプラリーのコラボメニューを食べられるのですが、レストランの受付は10時からで、自分はこのとき9時半頃に貴賓館を訪れていました。予定よりも早く来すぎたというわけではなく、旧青山別邸の鰊御殿を見て回ることができるのは9時からだったので、先に鰊御殿を見て回ってからコラボメニューを食べる算段だったのです。30分ぐらいで見て回れるやろうと思ってたんですけどね。規模が思っていた以上に大きく、1時間ほどはゆっくりと見て回ってたんじゃないでしょうか。入場料が1100円とお高い印象を最初は持ちましたが、満足感がゆうに超えていきました。おたる水族館近くの鰊御殿とは異なり、旧青山別邸の鰊御殿は、柱の1本に至るまで、贅沢の限りを尽くしているというような作りで、梁などの主要な柱は高級な木材が使われていたり、各部屋で使う材質を変えて違いを出したり、飾られている一つ一つの展示が、当時から高価なものであり重要な歴史的価値のあるものばかり。というかひとつひとつが大きいものが多い。部屋を囲むような屏風とか、ふすま全体に描かれた絵画とか、それひとつにいったい職人がどれだけの歳月をかけたんだと考えさせられます。芸術の分野を広く、そして歴史も知っているとどれだけ貴重であるかということがわかるのかもしれませんが、自分はあいにく芸術には疎く、そういった方面で目を輝かせるということはありませんでした。しかしそれでも魅了されるものは多かったです。そして同時に目立ったのは、作品を守るために書かれているであろう注意書きの多さです。やはり展示というのは破損のリスクを抱えるようで、手の届く位置に、遮るようなものもない空間に鎮座しているものが多く、故意でなくても傷つけてしまうといったことは起こりそうだなと感じましたね。自分も大きめのカバンを持っていたので、ぶつけてしまわないかというのは心配でした。受付で預けてくればよかったと後悔したものです。旧青山別邸の館内は撮影が禁止されていますが、以下の写真は、唯一撮影が許可されているもので、龍に見える赤松です。縁側など足元が非常に冷えるのですが、入館時に厚手の靴下を寒さ対策として渡してくれます。これがあっても終盤は冷え切ってしまいました。
ゆっくりと鰊御殿を見て回ったことで、すでにレストランはオープンしています。まだ早い時間ということもあってか、自分がテーブルに付いたときは他にお客さんはいませんでした。窓際の景色がよく見える席を陣取り、コラボメニューをいただきながら、朝の活動で疲弊した下半身をいたわります。貴賓館で提供されているコラボメニューは4種あり、すべてをいただくにはボリュームがあったので「オニオングラタンスープ」と「マシュマロハイビスカスラテ」を頂きました。鰊御殿を回ったことで冷えた体に、スープの暖かさがしみる。濃いめのコンソメ風味のスープと柔らかくなったオニオンが食欲を誘い、熱いながらも短時間で平らげてしまっていました。次にマシュマロハイビスカスラテを頂いたのですが、オニオンスープの塩味のあとで、ラテの甘みが非常に際立ちましたね。オニオンスープとラテの無限ループができそうなほど、塩味と甘味の振り幅が大きいと感じます。疲れた体が糖分を求めているというのもあったのかもしれませんが、非常に美味しかったです。ハイビスカスの酸味もほんのりあり、くどい甘さというわけではなく、思いのほかスッキリとしていたというのも意外でしたね。
コラボメニューに満足し、貴賓館をあとにしようとした直前に缶バッジを購入していないことに気づき、慌てて売店に向かいました。今回のスタンプラリーで追加となった缶バッジは4つだけだったので、完全に油断してました。無事に缶バッジを取得し、再度おたる水族館に向かいます。今回は時間があまりないので、水族館のスタンプを押すだけとなります。鰊御殿の見学に予想以上に時間を費やしてしまったのが原因でもありますが、泣く泣くエントランスまでで引き返すことになりました。ペンギンの散歩とか見たかったです。次回また来る時の楽しみとしておきましょう。
小樽駅近くまでバスで戻ってきて、コラボメニューを提供している龍鳳さんに今度は向かいます。これまで2日続けて入店できていなかったので、今度こそはと意気込んで雪道を進み、そして3度目にしてようやく入店できました。妙に感動しましたね。まぁ書き入れ時のランチタイムにやっていないというのはさすがにないですね。すでにお客さんがそこそこ入っており、あんかけ焼きそばをつついている姿がちらほら見えます。噂のコラボメニューである真っ赤なあんかけ焼きそば食べている人はいなさそう。席につくやいなや、店員さんにコラボメニューについてお聞きし、そのまま1人前を注文します。注文してから気づいたんですが、隣の席で食べている人の前に置かれている、あんかけ焼きそばの皿がでかい。相撲の優勝杯としてみるような大盃ぐらいの大きさがありませんか?お店の壁に貼ってあるメニューを見てみると、その中に「1人前2玉」という文字を見つけ、ぎょっとしたものです。ここまでかなり歩いてはいるものの、朝食から3時間ほどしか経っておらず、さらに貴賓館でコラボメニューもいただいている。食べきれるかという不安が溢れるなかで目の前に出されました、コラボメニューの「六花専用焼きそば」。見た目のインパクトに後退りしてしまいそうでした。赤い。そしてやはり多い。辛くはないと伺っていたので、その点について心配はしていないものの、どういった味なのかを見た目からは全く想像できませんでした。中心にのっているのは水気を切ったヨーグルトらしく、これを混ぜるとピンク色になります。ただこのときはヨーグルトの量が少なかったようで、色の変化はさほど大きくはなかったです。意を決して食べてみると、程よい酸味が混じったあんかけ焼きそばの風味なんですよね。見た目と味のギャップに脳が混乱するという良い事例だと思います。酸味のもとはトマトやビーツといった、あんかけ焼きそばの具としてはあまりみかけないものによって生まれているようですね。油っぽいだけならしんどいかなとも思ったんですが、酸味があるから2玉ぐらいいけそうだ!そう思い食べ始めて6割ほど進んだところできつくなってきました。麺よりも具のほうがけっこう多いんですよね。ボリュームの大半を占めるのは麺ではなく、野菜を含んだ餡の方でした。麺はむしろズルズルと食べ進められ、早々になくなったのですが、配分を完全に間違えましたね。それでもなんとか時間をかけ、完食することはできました。お客さんが多くなる時間帯なんですが、すぐに動けず申し訳ない気持ちになってました。
龍鳳のコラボメニューを頂いたことで、スタンプラリーに関連する場所はすべて回りきりました。あとは電車に乗るだけではあるのですが、ここまでバスを待つといった時間がほとんど発生しなかったこともあり、思っていた以上にスムーズに回れて、1時間ほど余らせてしまいました。おたる水族館をみておけばよかったなという後悔を頭の片隅で感じつつ「時間があったら寄る場所リスト」を眺めます。龍鳳の焼きそばによってお腹の余白はありませんが、コーヒーを飲むぐらいなら大丈夫だろうと、小樽駅と運河プラザの間辺りにある「Coffee House CHAFF」にお邪魔しました。
コーヒーを飲みながら、ゆっくりと本を読む。そんなゆったりとした時間が流れる空間が店内に広がります。本棚においてあるコーヒーに関連する書籍の数々も個人的には興味深かったですね。今後読む書籍の候補として、書籍の一覧を写真におさめたりしていました。注文したのはオリジナルブレンドの「CHAFFブレンド」。メニューにどの国の豆がどの程度入っているのかといった配分まで書いてあります。ブラジル50%コロンビア25%エチオピア25%、非常に親切。厨房が見えるカウンター席に座っていたので、店主がドリップする姿も見え、どんなふうに淹れるのかなと無意識にまじまじと見てしまっていました。出されたコーヒーの香りは非常に芳醇で、エチオピアの豆が25%と比較的少なめではあるんですが、もっと含まれているのではないかと思うような香り具合でした。味においては酸味が少し感じるぐらいなので、もしかしたら香りのもとはブラジルの豆が握っているのかもしれません。スッキリとした飲み心地でありながら、コクも程よくあるというバランスの取れた風味だと思います。そして同時に感じたのが、目の前にある自家製のデザートを食べてみたいという欲求。しかし胃袋に余裕がない。別腹もできないほど。デザートと合わせて飲むと絶対美味しいよこのコーヒー、と思いながら必死に我慢していました。電子書籍に逃げるようにデザートから意識をそらしつつ、電車の時間が来るまでしばらくゆっくりと過ごし、お店を出るときにいただいたブレンドの豆を100g購入した。家に帰ってゆっくり淹れつつ、これを動画で紹介しようと考えてましたね。出先でお気に入りのコーヒーショップを見つけて豆を購入する、旅行の個人的な楽しみだったりするのです。
小樽駅に徒歩で向かい、改札をくぐって電車に乗り、長い長い帰路につきます。発車するまでの時間で小樽での3日間を振り返ってましたが、たくさん動きましたね。1回目のスタンプラリーでは自転車で広範囲を移動しましたが、今回は徒歩による移動も多く、スノーボードで滑ったりもしたことで、下半身の負担が大きいです。歩数計とかを確認してみると、1日15000歩以上歩いてました。雪道の中というのを考えると、普通の歩行以上のエネルギーを消費していることでしょう。数回派手にころんだことで、肋骨のヒビが悪化していないかだけが心配でなりません。
新千歳空港までの電車で「この車両は指定席ですか?」と韓国の方から英語で質問を受けこたえたり、東京までの飛行機が1時間以上遅れていて、おたる水族館を回ればよかったとさらに後悔したり、鰊御殿を回るときに渡された厚手の靴下をずっと履いていて空港で気づいたり、東京から家までの電車でアジア系の20代ぐらいの男性陣に「この電車は浅草まで行きますか?」と英語で聞かれ、さらにブルガリアの人に「押上に止まりますか?」と聞かれたり、帰る間もやけに外国人に質問されるという体験をして、海外からの観光客が増えているんだなと実感したりしました。同時に自分の英語の拙さも明るみになり悔しくなってます。時間見つけて英語も復習しないとな。
なんとか日をまたぐ前に家につくことができ、椅子に座ると疲労感とともに終わってしまったという喪失感が体を沈めていきます。動けない。これもまぁ楽しかったことの反動でしょう。冬の小樽というのは、北国の厳しさというのを垣間見ることができますね。寒さもそうですが、日常的な行動の制限に対していかに思い通りの行程を踏めるか、というのを試された気がします。そんな中で今回は、様々な幸運に恵まれたと感じています。1日目は鉄道が動かないトラブルもありましたがバスが動いていて小樽に到着でき、2日目のゲレンデでは滑る直前にボードが届けられたり、その他いろいろな方の優しさのお陰で、本当に楽しい3日間でした。第3回小樽スタンプラリーの旅、これにて終幕です。今回の旅の記録も今後動画にしようと思います。そしてまたスタンプラリーが開催された暁には、また小樽に舞い戻りたいものですね。