東京コーヒーフェスティバルに行ったよ

東京コーヒーフィスティバル

 新しいコーヒー豆をどうしようかとネットサーフィンしてたら見つけたこのイベント。コーヒーフェスティバルと名のつくイベントはいくつかあるみたいだが、その中でも比較的大きめのイベントのようだ。ブースは50近くもあるのだが、カフェインの取りすぎがこわいので、実際に飲んだりできるのは10店舗もない。そのため事前に出店リストから回るブースをある程度絞るのが重要になる。

 このイベントで見られる店舗は個人経営のような小規模のものがおおく、SCAJのイベントの雰囲気とはまた一味違う。コーヒー豆を中心としたラインナップが多く、バンドの演奏を聞きながら試飲するといった環境は独特だった。流行りをうけてなのか、浅煎りの豆を押し出している店舗が多いなと思いながら店舗リストを眺めていると、ひときわ目を引く店舗名「アアアアアア 豆焙所」をみつけた。「印刷のミスか?」とも思いネットで名前をそのまま入力してみると実際のお店のサイトがヒットするのだから更に驚いた。台湾のお店のようで英語表記だとRが並ぶようだ。カタカナ表記だとこうなるのかと、豆の情報よりも名前について調べてしまった。

 イベント当日、事前チケットの購入をした状態で現地へ。道中、ホームと電車の隙間に足がはまってしまう乗客トラブルが目の前で発生し遅延したりもしたが、11時スタート直後あたりに会場入り。しかしここからが大変だった。まず事前チケットの交換で試飲コインと専用のグラスを受け取らなくてはならないのだが、すでに長蛇の列ができていた。まぁ交換作業だけなら列の進みは早いだろうと、楽観的に考え自分もこれに習う。すると30分経ってもまだ交換が済まない。この日は日差しも強く気温も高い。加えて日陰がない場所に並ばされ汗が止まらない。カフェインを薄めるために持参した水はすでに半分以上消費した。本部のアドレスに苦情を投げてやろうかという思いをこらえつつ更に30分ほど経過したところでようやく自分の番に。どんなに時間がかかる作業なのかと身構えていたが、指定のものを受け取って事前チケットにチェックを入れるだけ。3人で対応していることを見ると、並列作業ができない仕組みというわけでもなさそう。運営側が問題に気づけていないというのが課題っぽい。

 苦労して得た試飲コインとグラスを持っていざ店舗の並ぶ国際連合大学中庭へ。最初に視界に入ってきた店舗では野菜や大豆製品といったものが並べられており「こんな店舗あったかな」とマジマジと観察してしまった。同じ日時にFarmersMarketというイベントがすぐ隣でやっていたようだ。これを知っていればこちらのブースについても事前に調べてたんだけども。一箇所で複数のイベントやってるのはすごいね。

 最初に訪ねたのは「ignis」。希少ロットやイノベーションロットをメインで取り扱っているお店らしく、どんな豆を持ってくるのかが気になっていた。ゲイシャを含む値の張る豆に目が行きそうだが、試飲コインで飲ませてもらった FESTIBAL BLEND が特に気になった。Tasteの項目に「ラベンダー」と書かれており、コーヒーの風味としては聞いたことがない。そして実際に飲んでみると、フローラルな風味のなかに、たしかにラベンダーのようなスッキリとした後味があるように思います。最初に訪ねたブースということもあり試飲したときは豆の購入を見送ったのですが、時間が経つにつれ売り切れを心配になって、再度訪れたんですよね。そのとき店員さんが自分を覚えていてくれていて「またきてくれてありがとうございます」といってくださった。嬉しさと同時に、お客さんを覚えるというのも接客するうえでは重要だなと実感したものです。

 このタイミングでぶいめろさんと合流。人も混み合ってきて目的のブースで試飲させてもらうのも一苦労という状況。毎回こんな感じなんだろうか?

 試飲2杯目は山梨県にお店を構える COFFEE LAB GRAY。浅煎り以外の豆を試飲させてもらおうかなと最初は思っていたのだが、ブランデーのような風味のものがあると説明を受けてコロンビアの浅煎りの豆を試させてもらった。そしてたしかにお酒を思わせるような熟成感のある風味。以前試したバレルエイジドのような、後付けの風味ではないというのだから驚きだ。このお店ではコーヒーのコース料理というのも提供しているというので、今度実際の店舗に足を運んでみたいものだ。

 

 チケット引換に時間がかかってすでにお昼を回っていたのでここでお昼ご飯。食べ物を提供しているブースや屋台というのもあり、何を食べるかを決めるのも悩ましい。そんな中で選ばれたのは古民家カフェ haru が提供していたキーマカレー。コーヒーを楽しんでいるときに辛いものはどうかなとも思ったけどうまいからよし。独自の漬物がいろいろのっていて、味の変化が楽しい一品でした。

 台湾で生まれた焙煎ブランドの「Pharos Coffee」を訪れた際、隣のブースが例の「アアアアアア 豆焙所」で、お店の幕にはカタカナ表記で店名が書かれていた。それが正式でいいのね。また、ぶいめろさんがこのお店の豆が気になると列に並んだはいいものの、いつまで経っても進まない。店員さんの様子を見てみると、試飲の人ひとりひとりにたいして都度コーヒーを淹れている用に見える。それは進まないよ。互いに台湾からの出店ということで「Pharos Coffee」の店員さん経由で「豆購入だけでもこの列に並ばないといけないか」と聞いてみると「こちらですぐに対応できるよ」と案内してもらえた。豆の紹介をしてもらったりこちらから質問したりできたのだけれど、英語でのやりとりとなりちょっと手間取った。コーヒーのイベントはどうしても英語がついて回るね。ブレンドの豆が面白そうだったので購入。店舗の名前のインパクトも強いんで、動画で紹介しようかな。

 最後に試飲したのは神奈川のお店「REDPOIZON」。ブラジルのゲイシャが売っているというので気になったが、試飲するには試飲コインが3枚必要とのこと。事前チケットで4枚ということを考えると強気な値段設定に見えるがどうなんでしょうね。ブラジルのゲイシャはドリップバッグだけ購入し、試飲はRAMJAMという深煎りのブレンドを試させていただいた。こちらは果実のような甘みがあるように感じる。深煎りとは思えないような苦みの印象が特徴的。豆のラインナップがなかなか面白いので、今度実際のお店にもいってみよう。

 事前に注目していたブースを一通りまわり、ぶいめろさんが興味を持っていたブースも見終わった。すべてを回ったわけではないけれど、全体的に浅煎りの豆が多いという印象で、コーヒーの風味の幅が広かったのは面白かったのだけれど、それぞれの違いをしっかりと言語化するのが本当に難しいと感じたイベントだった。果実っぽい、花っぽいなど、大枠は表現できるものの、そこからさらに細部を表現しきれない。表現しきれないと同じ豆を使用しても再現が難しい。定期的に美味しいお店のコーヒーを飲んで、感覚を失わないようにしたいものです。いくつかの店舗は実際に訪れることもできそうなので、まわれなかったところも含めて、今後ひとつひとつ訪れてみよう。

代官山のPOCSにいったよ

 コーヒー趣味仲間のぶいめろさんと一緒に、昨年12月にオープンした代官山にあるコーヒーショップ、POUR OVER COFFEE STAND(POCS)にいってきました

google map とにらめっこしながら「この辺だと思うんですけど」と不安になりながら細い道をくねくねと進んでいく。市街地の中ほどに入りこむような路地を進んだ先にその店は佇んでいた。文字がドリップを表しているイラストになっているのが非常にユーモラス。

 お店としての敷地が大きくはなく、応対するカウンターとその前にカウンター席2つ、テーブルのある席がひとつと、2組の客が来るだけでいっぱいになる。テイクアウトがメインのようだ。店主はとてもフランクに話しかけてくれて「このお店はどこで知ったの?」「どこの豆が好き?」といった軽い質問の流れから、ぶいめろさんには深煎りの、自分は浅煎りのコーヒーをということに。この時点でメニューとかを見たわけではないので、毎回今相手によさそうなコーヒーというのを選別しているのかもしれない。値段がすぐにわからないという点はちょっと不安になった。

 コーヒーを淹れてくれている間も、ひとつひとつの作業をみながら気になることについてこちらから質問をいろいろ投げかけさせてもらった。今思うと作業のじゃまになっていたんではないかと気がかりになっている。そんな心配を想起させないような、フレンドリーな受け答え。そのやり取りの中で、淹れ方の考え方として新しく得た知見は多かった。

  • チャフは雑味の原因になる
  • 静電気でひっつく粉はチャフや微粉なので、むしろミルにひっついてくれてありがとうという気持ち。対策はしない
  • 深煎りにはネルドリップを使うことで油分の風味が得られる
  • ネルの保存方法の一つとして、洗ったネルをジップロックに入れて冷凍室に入れておく。使用するときに水で流す。冷凍室に入れておくことで菌の繁殖を防ぐことができる
  • ハンドピック大事
  • 温度を下げることで甘みを引き出す。2度ずつぐらいで調整
  • パナマゲイシャのいいものは、豆自体のポテンシャルが違う(実際に飲み比べをさせてもらいインパクトの違いを体感した)

 そして提供していただいたコーヒーは、エチオピアの Heirlooms という品種の豆。スペシャリティコーヒーのECモールのHeirroom と似ているけれど関係はないと思う

 明るい香りが広がる紅茶のような印象のコーヒー。カップから香るインパクトが想像以上で「おっ」と感嘆の声が思わず漏れた。ゲイシャを思わせるような華やかさではあるが、花を思わせるフローラルな香りに加えて、柑橘系の香りも含まれているような、重層的な香りが印象深い。最初口にしたときの味の軽さというのか、非常にスッキリとしているのだけれども、心地よい酸味を感じさせる味わいがとても好印象だった。すごく美味しい。提供のされ方にも工夫があり、できたコーヒーをいっきにカップに注ぐのではなく、少しカップに注いで残したコーヒーは別容器(ストック)に蓋をして、カップが空になったらまた注いで飲むという形。店主曰く、香りが飛ぶのを防ぐという目的があるとのこと。たしかに野外で飲んでいるということもあり、ゆっくり飲んでいると香りが弱くなっていくのだろう。また、冷めると香りも立ちにくくなるしね。急須のようなものを使ってもいいのかもしれない。こういった細かい飲み方についてもこだわりがあり、それらについて聞いたら気さくに教えてくれる店主の気概というのが素晴らしい。

 自分たちがカウンターでコーヒーを飲んでいると、もう一組のお客さんがお店にやってきた。場所がかなり特殊な位置にあり小さな店舗であるだけに、別のお客さんがすぐ来ることに驚いた。常連のお客さんなのか「今こんな豆があるよ」と、いろいろななめの入った袋の詰まったカゴをまるっと手渡していた。一律のメニューとかから決めるのではなく、その時揃えられた豆から選ぶようなスタイルらしい。2人のお客さんが2種の豆をそれぞれ選んでいたのだが、そのうちの一つが自分が今まさに飲んでいる豆と同じものだった。店主曰く、ちょうどさっき手に入れた豆なんだそうで、淹れ方の調整をしている最中のものを自分は頂いてた。そしておもむろに店主から「ちょっといいかい」と自分に淹れてくれたコーヒーのストックをつまみ上げ、少しだけ別のカップに注いでそのお客さんに差し出した。「こんな感じの豆だよ」と試飲をを促すというのもなかなか新鮮なやり取りで、自分も「どうぞどうぞ」と自然に促していた。2回目となるエチオピアの Heirloomsを用いたコーヒーは、お湯の温度を2度下げていれるという調整をし、すこし甘みを引き出すというレシピ。淹れたコーヒーをあとに来たお客さんに提供すると同時に、少し注いだカップを自分にも渡してきた。なんと飲み比べをさせてくれたのだ。たしかに酸味がマイルドになり甘みを感じやすくなっている。2度の温度差の影響を体感できたのは自分にとっては嬉しい経験だった。浅いりの豆を使用する際、90度あたりの温度で淹れていることが多かったが、少し温度を下げて試してみたくなる。

 2人のお客さんが選んだ2種の豆のうちもう一つが、高級豆として有名なパナマゲイシャの豆ということもあり、ゲイシャの話題に。その中で自分が「値段ほどの風味の違いをまだ感じ取れなくて」といった発言をしたのだが、そのときちょうどパナマゲイシャのコーヒーが入れ終わったタイミングも合ってか「これを飲んでみて」とまた飲み比べ用に少量注がれたカップが手渡された。驚きのあまり受け取るのをめちゃくちゃためらった。変なこと言ってすみませんとひたすら申し訳ない気持ちになる。それでも興味津々ではあるのでお言葉に甘えて試飲させていただくことに。これはすごいわ。口に含んだ量に対して広がる風味のどあいに明らかな差を感じる。風味の密度というのか、インパクトが明らかに強い。それでいて尖っているというような悪い印象がまったくない。淹れている人の技術というのも当然あるのだろうけれど、コーヒー豆のもつポテンシャルの差というのを確かに実感できる。高値がつけられるわけだ。店主いわく「ガンダーラはパナマゲイシャに通ず」と表現されていたのも印象に残っている。良い豆というのを探し求めていくと、誰しも最後にはパナマゲイシャにたどり着くのだそうだ。

 十分に話を聞きコーヒーも飲み終わったところで、ぶいめろさんとともに心配になったのはお値段。注文時にもメニューみたいなものはなく、値段についての上方がまったくないなか、話の流れでいろいろと試飲させていただいたりしたため、けっこう払わないといけないのではないかと急に不安になった。そして店主から言い渡された会計は1500円。コーヒー1杯の値段としては高いとなるかもしれないが、いろいろ飲ませてもらった身としては「これだけでいいんですか?」と呆気にとられるものだった。パナマゲイシャも飲んでますよ?

 店主に何度もお礼を言いながらお金を渡し、お店をあとにした。満足感にあふれ、誰かに教えたくなるお店であった。帰り際にぶいめろさんと「このお店はすごい」と興奮気味に話ができたのもいい思い出。なかなか場所が遠いので頻繁に通うのは難しいが、コーヒーが好きな人にはぜひともいってみてほしい。