『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』を読んだよ

 小樽に旅行に行ってからというもの、ゴールデンカムイにめちゃくちゃハマりまして、Kindle で最終巻まで読み終わった後、関連する書籍として『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』というのを見つけた。というか Amazonのレコメンドで出てきた。

 ゴールデンカムイという世界観についてもっと知りたい、もう少しゴールデンカムイに浸っていた、最初はそんなモチベーションだったと思う。そして実際に読んでみると、ゴールデンカムイという世界観におけるアイヌ文化が絶妙なバランスでちりばめられているのか、ということを実感し、よりゴールデンカムイという作品を好きになった。アイヌ文化について、聞いたことがあるといった程度の自分は、ゴールデンカムイの作品で語られるアイヌ文化について、ほぼ盲信しているような状態であった。しかしこの書籍のなかでは、すべてが本当のことというわけではなく、実際によく調査されたあとに、作者の野田サトル先生が意図して「漫画としてはこう」というリアルとファンタジーの線引を行っているのだということが語られていた。「そうだったのか!」という発見があることもこの書籍の中の楽しみではあるが、それに加えて、リアルとファンタジーの塩梅がいかに巧妙であるかという、野田サトル先生の凄さ、ゴールデンカムイという漫画のおもしろさを改めて知るよい機会となった。

 この書籍の内容の多くは、タイトル通りアイヌ文化についての資料的な視点で書かれており、ゴールデンカムイではどうだったかという書かれかたをしている。そのため、アイヌ文化の入門書とも言えるような参考書を読んでいる気分でもあった。ゴールデンカムイの理解度を上げるというだけではなく、現在どのような形でアイヌ文化の保全活動がされているかといった情報も得られるので、ゴールデンカムイという情報のきっかけに加えて、今後はアイヌ文化という情報のアンテナを立てることができたと思う。

 これを一通り読んだ後、またゴールデンカムイが無性に読みたくなるので、これから読まれるという方は、ゴールデンカムイを読む時間も含めて確保したほうが良いですよ。自分はこれから読み返すところです。

『Silver Star Shining in Spring 春に輝く銀星』を読んだよ

 しおばな祭で唯一購入した同人誌、「Silver Star in Shining Spring 春に輝く銀星」を読み終えました。しおばな祭では合同誌の購入が目的だったので、他のブースでの物販購入は当初予定しておりませんでした。それでも出店されているみなさんの作品はどれも魅力的で、自分が石油王なら一通り買いたいなと思うものばかりでした。そんな中で、劇団ZEKE座さんのブースの「Silver Star in Shining Spring 春に輝く銀星」は一際惹きつけられました。おそらく、中世ヨーロッパを舞台とした書物というのが物珍しく、イラストも目を引く素晴らしいものだったからだと思います。合同誌を読み終えた後、ゆっくりとしたペースではありますが、こちらも読み進め、最近になってようやく読み終わりました。

 ネタバレ防止のためにも、内容について多くは触れませんが、中世ヨーロッパ特有の霧のような、あるいは工場による埃っぽさのような、ミステリーではないけれども謎めいた雰囲気が文章から感じられ、舞台背景に伴うこまかな描写がさらに時代感をよりリアルに感じさせてくれます。それでいて、いい意味で勢いを感じる、著者の筆の乗りの良さを感じる作品でした。小春六花と紲星あかりという組み合わせが新鮮だったので、自分にとっては引き込まれる要素がふんだんに含まれ、これを読むために時間がほしい、続きを読むために夜更かししたいと感じるほどでした。終盤の30ページほどは深夜1時から読み始めてましたね。

 百合展開のような描写はほぼないです(だからこそ自分も買ったわけですが)。まぁ人によって何が百合展開なのか線引がわからないので、ぜひ手にとって読んでみてくれとしか自分からは言えないですね。あどけなさを残しながら成人しているような、小春六花と紲星あかりそれぞれのキャラクターの魅力と、お互いの距離感の心地よさというのは、憧れるような気持ちもありつつ、なぜか儚さをも感じられ、目が離せなくなりますね。

 とてもいい作品の出会いのきっかけを作ってくれたしおばな祭に改めて感謝し、この作品を生み出した劇団ZEKE座さんに最大限の敬意とこのお言葉を贈りたい。

「めちゃくちゃ面白かったです!!!」

珈琲店タレーランの事件簿シリーズ(1~7巻)を読んだよ

 読書が好きで、ジャンルは軽いミステリー要素があるものが特に好みで、コーヒーも自分で淹れて動画にするぐらいに好き。好きなものと好きなものが合わさった、自分に向けられて執筆されたのではと錯覚さえしそうな小説、それが「珈琲店タレーランの事件簿」だった。

 この小説を最初に見つけたのは、かれこれ10年ほど前になります。当時「ビブリア古書堂の事件手帖」がブームとなり書店で多く見かける状態で、自分も漏れなくこのシリーズにハマり愛読しておりました。ミステリー要素と古書をかけ合わせたような内容で、これをきっかけとしてか、ミステリー要素となにかをかけ合わせたような小説が同時期にいくつもでていたように思います。ミステリーと時計屋とか、ミステリーとディナーとか、ミステリーと数学とか。そんな中で見つけたのが、ミステリーとコーヒーという組み合わせの「珈琲店タレーランの事件簿」。当時まだ自分で豆を挽くといったことまでしていませんでしたが、コーヒーには興味をいだいていたので、自然と手に取っていました。最初のきっかけは本当に、好きなものと好きなものが要素として含まれているからそんなに間違いはなかろう、といった程度のものでした。

 1巻目の「珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を」を読んだとき、最初の印象としては「ビブリア古書堂の事件手帖の二番煎じ」というのが正直な感想でした。執筆時期の詳細まで追ったわけではなく、自分の読んだ順番が「ビブリア古書堂の事件手帖」が先だったということと、人気の大きさからこのような印象を持ったのだと思います。コーヒーの要素は自分が思っていた以上に散りばめられており、一種の雑学本のような感覚で楽しんでいましたが、ミステリー要素としての印象はそこまでインパクトがないという個人的な評価です。あとがきにもあったのですが、この作品のもととなるものは「ミステリー要素が弱い」という評価を受けており、そこからさらに手直ししてミステリー要素を膨らませたうえで出版されているとのこと。おそらく、他のミステリー作品をそれほど読んでおらず、比較対象が無いような状態で読めば、ミステリーとコーヒーというのを主軸に、登場人物の人間関係や京都を舞台とした背景設定など他の要素を含めてバランスのとれたとても読みやすい小説として、かなり好印象で受け止めていたと思います。

 1巻目で自分にとってはそれほど高評価ではなかったわけですが、コーヒーに加えて、京都の舞台を前提とした、自身の知識欲を満たす要素がふんだんにあったこと、1巻目で完全にひと区切りついているような感じなのに続きがあるとはどういうことか、展開が知りたいという欲求が湧いたので、当時発売されていた巻数すべてを読み進めていました。巻数が進むに連れてミステリー要素はより深くなり、登場人物たちへの愛着も湧いて、当時3巻までしかでていなかったと思うのですが、3巻を読み終わった時点で熱心なファンとなっていました。

 環境の変化などによって小説を読む機会が減り、続編がでていることにも気づかぬうちに数年が経ちました。ふと何かの拍子に小説の話題となり、そういえば当時読んでたものって続編出てるのかなと思い出した本の中に「珈琲店タレーランの事件簿」があった。改めて調べてみると7巻まで出ており、電子書籍でまとめて購入。時間を見つけて徐々に読み進め、最近になってようやく7巻まで読み終わりました。全体を通して、コーヒーと京都縁の地に関する話題が多く、趣味の周辺知識を知るといった部分は非常に面白く読ませてもらったという印象です。深く細かい心情の描写といったものは少ないながらも、登場人物たちへの愛着はより深くなり、主要人物たちのその後がより気になる状態です。ミステリー要素については、私個人の感覚ではありますが、巻数を重ねるにつれ、読み応えのある内容になっており、惹きつけられるお話と感じ、こう言っては失礼かもしれませんが、著者自身の成長を見るような感覚になりました。そういう意味でも、次巻が楽しみでなりません。

 あとがきをみる限りだと8巻も出そうなので、今後の楽しみの1つとして、ゆっくり待とうと思います。あまり内容に踏み込まない書き方をしているのは、ネタバレ防止というのもありますが、さすがに7巻分という分量をまとめる自信がないというのが大きな理由になっています。とっちらかった内容になる未来しか見えない。。。

 コーヒーや京都の街並み、軽いミステリーがお好きという方であれば、十分に楽しめる小説だと思いますので、ぜひ読んでみてください。

ビブリア古書堂の事件手帖 1~7 を読んだよ

 ひょんなことから過去に読んだ小説の話になり、「ビブリア古書堂の事件手帖」を思い出し、同時に「そういえばこれって完結したのか?最後まで読んだっけ?」と気になり始めて読み直した。どこまで読んだかはっきりと覚えていなかったが、読み進めるうちに断片的な記憶と照らし合わせると6巻まで読んでたことがわかった。あと1冊だけ読んでなかったのね。

 この小説の好きなところはヒロインの篠川栞子がめっちゃ好きというのもあるんですが、本そのものについての歴史や背景といったものを知ることで、本に対する興味の幅を広げることができると気づかせてくれること。本の発行において発行時期の時代背景を受けて再編されているものがあったり、同じ内容の本でも種類がありその中には稀覯本としてあつかわれるものがあったり、雑学とひとくくりにいわれると否定はできないが、本が好きな人をさらに本好きにさせる魅力がこの小説にはあると感じた。また、小説の中で扱われる著者や書籍についてのエピソードがつらつらと書かれているだけならただの資料本なのですが、これらの要素を交えつつ、本筋はミステリーになっており、次の展開が気になって読み進めてしまうような小説となっている。この辺のバランスの良さが、この小説の魅力なのかもしれない。

 トリックなどがわかっている状態で読んでも楽しめるほど、どの巻の内容も好きなのですが、特に6巻の太宰治を題材にした話は特に印象深く、読み返す前から思い出せる記憶の多くは6巻の内容のものでした。昔からなじみのある有名な文豪というのもあるでしょうけれど、6巻で書かれる人情描写が強く記憶に残っていました。ここまでくると読書好きではなく読書狂と呼ばれてもおかしくない、そんな感情を抱いたことが思い出されます。好きの延長にたどり着く狂気というのは、誰にでも起こりうることでありながら、好きのベクトルが人によって異なるために理解されない、好きすぎるがゆえの孤独といったものを、この小説を通して考えさせられました。

 小説の中で時折、登場人物が本の一節を暗唱する形で状況や思いを伝える場面が多くあります。テイルズオブシリーズが好きでよくなぞらえるといったこともしますが、こういうことができるほど、本を読み込み、反射的に結びつけて表現することができるという状態に、なんとなくではありますが憧れたりします。表現のしかたにバリエーションがでて彩られる感覚というのでしょうか、誰かに伝える手段として多くの言葉やフレーズで表現できる、あるいはこの言葉でしか表現できないといったような適切な言葉選びが都度できるようになりたいと常日頃思っていますが、こうやって文章として書き表される表現は常に似通ったものばかりになってしまうのが残念なところ。インプットばかりが多く、アウトプットで活かしきれていないなと実感します。

 ビブリア古書堂の事件手帖について改めて情報を追ってみると、その後の世界観ですでに小説が2冊でていて、さらに 2022.03.25 には3冊目が出版されると書いてある。いいタイミングで見直したのかもしれないという幸運を思う気持ちと、まだ続いており今後の楽しみが増えたという期待の気持ちが溢れてきます。しかしながら、7巻の巻末にはアニメ映画の話がでていたのですが、公式サイトでは全く情報がありません。ドラマは地上波でやったものと、映画で別の主演で放送されたものがありましたが、あまり評判はよろしくなかったようで、もしかしたらこれらの結果からアニメの話は頓挫したのかもしれないと思うと残念でなりません。地上波で放送されたドラマは自分も見たことがありますが、あまりにも設定が変更されもはや「ビブリア古書堂の事件手帖」という名の別物を見せられており、内容も今ひとつというのが正直な感想です。ヒロインに妹がいるはずなのに、ジャニーズが演じる弟に変更されていたり、ヒロインが黒髪ロングなのにくせっ毛のショートヘアになってたり、ホームレスのおじさんがおしゃれなおじさんになってたり、大人の事情があったんだろうなと邪推せずにはいられない内容でした。やっぱ実写版は地雷ですね。

 小説の話で思い出したものは他にも「珈琲店タレーランの事件簿」というのがあり、これも途中までしか読んでおらず、続きが気になったので改めて読み進めようと思っています。ビブリア古書堂の事件手帖の続編も気になるので、しばらくは読む本にこまることはなさそうです。珈琲店タレーランの事件簿は、ビブリア古書堂の事件手帖を読んだあとでは二番煎じという印象を抱くことは免れませんが、自分がコーヒーが好きということもあるので興味が続いているといったものになります。本以外の自分の趣味が重なる書籍というのは、魅力的に映るものですね。

 ひたすら本を読むだけで生活できたらと夢見つつ、今回はここらで筆を置こうと思います。

 

「採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ」を読んだ

 仕事の都合柄、人材業界についても知見を得ておかなければならず、とにかく概要だけでも知れる書籍はないかと探して見つけたのがこの本「採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ」

 人材業界の歴史を淡々と語る内容ではなく、各時代における主要ビジネスモデルと主要人材企業の立ち位置についての説明があったり、テクノロジーによってこの業界における戦い方がどう変わったのか、また今後どうなるのかなど、人材業界をひとつのテーマとした小説のような読み応えのある内容だった。特に自分にとっては、indeed がなぜこの業界で強いのかという疑問にしっかりと答えてくれていたのがとても助かった。

 人口が減少していくことがほぼ確実という日本の状況に対して、人材業界はこれに合わせて衰退するだけなのか、それとも人生100年時代や副業が浸透しまだまだ伸びしろがあるとみるべきなのか、今後この業界がどのようになるかの予想を立てるひとつの参考資料としてもとても役立つ書籍だと感じる。人材業界をテーマとした書籍があまりないことからも、この書籍の存在意義は非常に大きいだろう。

 人材業界に関わる人に限らず、就職や転職を考えている人、会社を経営するような立場の人も、当事者としての立場で参考になる箇所がいくらかあると思うので、広い範囲で役に立つのではないかと思う。すこしでも興味を持った人はぜひとも目を通してみて欲しい。

「げんしけん」を読んだら「Spotted Flower」も読んでくれ

 言いたいことはタイトルの通り。「げんしけん」を読んだ人は「Spotted Flower」も読んでくれ。げんしけんはアニメにもなりそれなりに名前は広まっていると思うけれど、これの後日譚のような内容となっている Spotted Flower が今もなお連載しているということを知っている人がどれだけいるだろうか。自分は1年ほど前に気づいた。

 気づくきっかけとなったのは、もともと書籍で持っていたげんしけんの漫画を処分し、電子版で再度買うということをした後に、Amazon のおすすめ商品として Spotted Flower が紹介されたことで存在を知った。

「同じ作者の作品か。概要だけでもみてみるか」

このときにスルーしなくて本当に良かった。概要を見たときの自分の反応は

「おやおやこの登場人物は?」

「なんか結婚してない?」

「何だこの人間模様!?」

 即座にその時出ている全巻を購入して読んだ。Amazon のおすすめは自分にとってコンバージョン率100%のものであり感嘆するばかり。自分の認識の外にあるもので、知れば必ず手には取るよねという賢い紹介ができるなら、ある程度トラッキングされてても抵抗がなくなってくる。むしろ進んで情報提供するかもしれない。

 本屋をぶらついて、意外な発見がないかを探すのが好きで、それと似たような感じでおすすめされたものとかけっこうみてしまう。統計とか技術書が多いけどたまに購読してる漫画の新刊とか出てるのがありがたい。最近やとブルーロックの新刊とか出るよって知ることができて超助かってる。あのサッカー漫画もおもろい。とくに Spotted Flower は1年に1冊出るか出ないかみたいなペースやから、こうやって教えてもらえないと忘れてしまう可能性が高い。いい時代になったもんや。