ボイロトゥーン仲間から「札幌の深煎コーヒー豆専門店から通販しようと思ってるんですが、便乗します?」とお声をかけていただいた。ちょうど浅煎りの豆がなくなる手前だったので、即座に「便乗させてください!グァテマラ200g!」と豆と量を添えて返信してた。タイミングが良すぎてコーヒー豆残量を見張られているのではないかと思うほどだった。同時に、知り合いで実は豆から挽いて飲んでるという人が新たに見つかった瞬間でもあった。コーヒーは結構な人が嗜んでらっしゃるのね。
後日直接お会いして手渡しでいただいたときに「浅煎りを飲んでいるようだったので深煎りの濃いやつを飲んでほしかった」という胸の内を伝えられた。まったく予期していなかったコメントに「フェッ!?」と変なリアクションを取っていたと思う。いやなんというか、しばらく浅煎り(中浅煎り)の豆を挽いて飲んでいたのは、HARUSORA Coffee さんに依頼したときに、たまたま浅煎り向けの動画を見ていたとか浅煎りのブームについて知ったという影響を受けただけであって、浅煎りの豆しか選んでいないわけではなかったんですよ。むしろいろいろ試したいなと思っており、HARUSORA Coffee さんから購入した豆がちょうどなくなるので、次は深煎り試すかと考えたりもしてました。だからこそ深煎り専門店への注文をご提案いただいたことは、自分にとって渡りに船だったので、ご提案に対して食い気味に返信してました。
手渡しで頂いた袋には3つの豆の袋が入っていた。2つは自分が注文したグァテマラ100gの袋が2つで計200g。ではもうひとつは?先方に伺ってみると
「おすすめのモカマタリ100gを入れときました」
神かな。ありがたく頂戴し、後日まずはモカマタリの方からいただいてみた。
封を開け、ブワッと広がる香りはコーヒーの香りというよりも、焙煎による炭に使い香り。豆は自身の油をまとっており黒光りしている。深煎りってこんなにも黒く、コーヒーオイルがこんなにもにじみ出るものなのかと初めて知った。豆同士が油でくっついたりしてる。キャニスターにうつし、計量スプーンですくって量を測る段階で感じた。あっ、これ密度低いやつだ。「YANAKA coffee ブラジル産 モンテショコラード」のときの経験が活きた。というかモンテショコラードよりも密度低いんでないかこれ?17gぐらいにしたけど、それでもハンドミルのホッパーは2回とも満パンになるような量だった。ホッパーに豆を入れた後にハンドルを回すわけだが、非常に手応えがない。豆を入れていない状態で回しているのとほぼ変わらない抵抗感。これ本当に挽けてるのか?と不安になるほどだった。粉になったコーヒー豆の量はやはり多い。これは過抽出になるかもなと不安になりながら、まずはモンテショコラードと同じレシピを試してみる。そして出来上がった初の深煎りの豆で淹れたハンドドリップコーヒーは、まるで炭を食べているかのような、口の中にスモーキーな風味が一杯に広がった。やはり豆の量が多かったかようだ。缶コーヒーのブラックよりもさらにブラックさを追い求めたような風味。ただ、エスプレッソをそのまま飲むような濃い苦味ではなく、焙煎によって生まれるスモーキーな風味が全面に押しだされた風味であった。ミルクや砂糖を混ぜても生き残り続けるこの風味は、深煎りの力強さを象徴するようであった。この豆をどう淹れるのが良いかという試行錯誤の戦いが始まった。
まず調整するのはやはり豆の量だろう。17gでかなり多いという印象で、徐々に減らして14~15g程度に。豆の量を減らすだけではまだスモーキーさが際立った状態だったので、今度はお湯の温度を変えてみた。温度が高いと比較的苦味などが抽出されやすいと伺ったので、お湯の温度を85度あたりから80度あたりまで下げることにした。この2点の変更でスモーキーさを残しつつもだいぶ飲みやすいコーヒーとなった。加えて、気になっていた円錐形のドリッパーを試してみました。これまで使用していたKalitaの陶器のドリッパーは、どのようにお湯を注いでもある程度ドリップされる速度が同じという特性を持ちます。これはあまり技術がいらないという意味では良いのですが、抽出速度を変えたいという人にとってはあまり向かない道具になります。抽出する時間が短くなればスッキリとクリアな味わいに、抽出する時間が長くなればコクのある苦味を含んだ味わいになるといった差があると考えていて、今回の深煎りの豆の場合は、できれば抽出時間を短くし、スッキリした味わいにしたいと思ったので、円錐形のドリッパーにして、短い時間で抽出するのを試そうと奮起。近くのコーヒー専門店に、円錐形のドリッパーを購入しに走りました。
100gの豆で試した中で、ブラックで飲んで美味しいと思えるレシピは以下のとおりです。
- odajun が思う「深煎りの珈琲 Basic モカマタリ」を美味しく淹れるレシピ
- 豆の量:14 ~ 15g
- 豆の引き方:細か目
- お湯の温度:80度程度
- 抽出器具: 陶器の円錐ドリッパー(2~4人用)、Abaca円錐形コーヒーフィルター白 2~4杯用
- ドリップするとき
- 蒸らし
- お湯を入れ始めるときから秒数を数え始めて40秒程度、お湯の量は50g
- さっとお湯を入れる
- 2回目以降
- できるだけゆっくりと中心から小さい円を描くようにお湯を入れる
- 以下の1, 2 の手順を300g淹れきるまで繰り返す
- フィルターとコーヒーの粉の境目辺りにお湯が見えてきたら注ぐのを止めて少し待つ
- 全体的に水位が下がり始めたらまた注ぎ始める
- 徐々にお湯を入れるペースを早めていく
蒸らしのあとにお湯を注ぐ工程なのですが、これまでのように時間と量を決めて注ぐと2分ほどで抽出が終わってしまいました。風味は狙い通りスッキリしたものになったんですが、物足りないという印象を抱きました。抽出が足りないのだろうと考え、ドリップの仕方をいろいろ検討したところ、時間や量を決めて注ぐのではなく、お湯を注いだコーヒーの粉の状態をみながら、少しずつお湯を入れていくようにしました。ドリップの時間が長くなるかと思ったのですが、2分半ほどでだいたい注ぎきり、3分以内には全体の抽出が終わります。HARIOの円錐形のドリッパーは、思いの外抽出が早くなる傾向があるように思います。このようにして淹れたコーヒーは、コクのある苦味とスモーキーさは残しつつも、ブラックのままでスッキリと飲みやすい味わいになりました。
個人的な好みではありますが、このレシピの豆の量を1gほど増やして濃くして、牛乳を入れてカフェオレにするのがお気に入りです。コーヒーの風味をしっかりと残しながら、マイルドになった苦味と牛乳のほんのりとした甘みの調和によって、ゴクゴクと一気に飲み干してしまいそうになるほど飲みやすいものになります。
レシピもあらかた決まって、動画投稿のために録画をしていきます。道具を準備してお湯を沸かして、豆を量ってハンドミルで挽いていく。軽い力でくるくると回るハンドル、そしてそのハンドルから伝わる感覚が、豆の挽き終わりを示す馴染みのある感覚に変化したところで手を止める。そして引き出しを開けて香りを確認しようとしたとき、自分のミスに気付かされた。引き出しの中に入れっぱなしの乾燥剤。豆を挽く前に取り除くのを忘れていた。深煎り独特のスモーキーな香りを放つコーヒーの粉から、取り忘れた乾燥剤を取り除き、引き出しに残った粉をふるいにかけ微粉を取り除く。まぁ風味に影響があるわけではないので、これも動画にするときはネタになるからいいか、とか軽く考えていたのだが、今回のトラブルはこれだけにとどまらなかった。
「ピンポ~ン」
蒸らしが終わりお湯を回し入れている最中にまさかの来訪者。しかもこの対応にけっこう時間がかかってしまった。コーヒーポットのお湯だけでなく、すでに途中までお湯を注いだコーヒーも冷めてしまい、そして来訪者の対応をしている間に GoPro の電池が切れてしまい録画が停止。さすがにこうなってしまっては動画で使えないなと録画を断念。同時に、モカマタリの豆を使い切ってしまったことで、改めて録画することもできない。動画投稿でトラブルはつきものですが、ある程度準備ができた中でのトラブルというのは、なかなか心に来ますね。モカマタリ、リベンジのためにもまた今度飲んでみようと思います。
ハンドドリップ関連動画
使用している道具